前作の続きになります
学校、始まる、そして過ぎ去ったことは過去の事
母親のモーニングコールで現実世界に戻ってきた
夏休み明けの朝、第一声はこの言葉しかでてこない
いきたくねぇ~~
この言葉を聞いた母親は、1ヶ月以上休んでおいて何いってんの。いくら休んだってキリがないと渇をいれてきた
そんな言葉を聞いたって、全然説得力なんてないし、なんせあなたは専業主婦でしょ、昔学生時代を経験したことがあるだろうけど、もうはるか昔のお話
あたしの気持ちなんて分かりっこないんだから
ごはんを食べているときも、準備しているときも、いきたくねぇ~は止まらなかった
「今日は午前中で終わりでしょ。まだ楽じゃん」
それはそうなんだけど、明日から普通の6時間授業に加え部活もあるし、も~何を言われようが全く元気がでない
冬休みまであと、4ヶ月か~
はァーながっ
昨日というか今日、あまり寝ていないので目が開いてない状態で学校に向かった
行きたくない、行きたくないと思いつつも背中に背負ったバックには全てを達成した重さを感じることができ、少し心地よかった
まるで旅行に行く前にチェックしたキャリーケースをおしているかのように
数日前までは、ばれたらどうしよう~なんて不安な気持ちがまとわりついていたけれど、不思議と今では何とも思わなくなった
全くないと言えば嘘になるけど、不安なんて最初のうちだけ、終わってしまえばなんてことはない
人間というのはどこまでも複雑な生き物だということを知ったような気がした
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あたしは権力者だ!
学校の玄関につくと約1ヶ月ぶりだが、どこか懐かしい感じがした
部活で学校にはきていたけれど、校舎には入らず外で過ごしていたため丸々来ていなかったことになる
教室に入り、机に宿題をしまっていると、おぉ! と背後から声がした
昨日の夜に電話をかけてきた橋本だ
読書感想文何時までかかった?
2時くらいかな、てゆうか書けた?
マジでつらかったよ! 家に全然本無くて何読んだと思う?
え~わかんね~、そんな意外な物読んだの??
え~っとね、十五少年漂流記だねww
おぉ! いいじゃん! いいじゃん!
なわけないじゃん
心の奥底では腹を抱えて笑ってしまった
・・・たしか十五少年漂流記って小学生用だよね
昨日小学生の時読んだ本を思い出して感想文を書くといったあたしだが、本当に書いてくるやつがいるなんて
プールの授業があって更衣室で水着を出したら女もんの水着(姉または妹の物)が出てきて先生に事情を話すも、それで泳ぎなさいと怒られ、泣きながら着替えてるくらいに笑えた
こういうやつがいるから世界は楽しいわけで
あたしの中では結構ツボだったが、ここではとりあえず褒めておくことにした
バカにすれば「じゃーお前は何読んだんだよ、見せてみろよ」
なァーんて、熱くなるだろうし
あたしのは絶対に見せれない
前半部分は言葉を変えて書いたにしろ、後半なんて聞いたことない言葉で埋め尽くされているから悪行がばれてしまう
そして、それをバラされるのが1番まずいことで、ここでは嘘でおだてておくのが正解
昨日あれだけ、怪しんでいたのにあたしのことは一切聞かれなかった
多分、読書感想文を書き終えることができ、安心したんだろう
チャイムがなり、始業式では定番の体育館に集合し、ろくでもない校長先生の話を聞き、終わりかと思えば教頭先生が現れ、みんなで小声でブーイングするも集合体になれば当然本人にも聞こえるわけで、そんな中でメンタルの強さを見せながら話をしていた
これで始業式を終わりますのアナウンスとともに安堵するあたし
1時間近く立っているなんて、もはや修行だよ
話を聞くことが大切なんじゃない、聞きたくない話をいかに我慢して立っていられるかが大切
3年生からテクテク退場し始めると、女性体育教師がテクテク歩いてきた
「2年生はこのまま残ってください!」
マジ、くたばれよ! 松橋!
結局始業式だけで終わらず、学年集会も決行され2時間体育館に缶詰にされた
教室に無事帰還し、10分の休み時間を終え今度は宿題の回収が始まった
出席番号順に呼ばれ教卓の椅子に座っている先生のもとに宿題を持って行く
そしてご丁寧にもひとつひとつチェックするという神対応
この時間は授業ではないので、立って歩かなければしゃべろうが何をしたって自由
あたしも近くの友達とギャアギャアおしゃべりをして自分が呼ばれるのを待った
すると、宿題あるあるフレーズが耳に飛び込んできた
「すみません、宿題は全部おわったんですけど、机の上に置き忘れてきました」
とか
「昨日徹夜でやったんですけど、朝寝坊してしまい忘れてきました」
あんたら小学生かよ
なんなの、その見え透いた嘘は
こんなカッコイイセリフを言えるのは夏休みの宿題をすべて終わらせた者だけがいえる圧倒的見下しであって、もちろんあたしは言う権利をもっている
先生も先生だよ
「じゃ明日かならず持ってきてよ、絶対だよ!」
甘すぎ、甘すぎ
あたしだったら
「へぇ~そうなんだ~、学校抜け出していいから今から取ってきて」とカマをかけてやりたいところだ
これは忘れたみんなにいったんじゃ~面白くないからあくまでランダムで
これも圧倒的権力者である、あたしだからこそ言えること
夏休みの宿題はこなすだけがすべてではない
提出して初めて意味をなすのだよ、小童ども
あたしなんて、言われたことはきちんとこなすし、持ってくるし、チェックも余裕でクリアするし、生徒のブラックミラーだよ!
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あなただったらどうする?
全員のチェックも終わり、最後に先生がこれからの行事のあれこれを話して学校は終わった
今日は橋本の家で遊ぶことになったので一緒に帰ることにした
夏休みにあった出来事や誰々のうわさ話をしていると、突然話を切り空想話を持ち掛けられた
透明人間になったら何したい?
えぇ~~っと、好きな人のところいくかな?
好きな人のとこいってどうすんの?
ん~私生活みたいじゃん
ストーカーかよ
まァー本人に知られたら確実に嫌われるわ、橋本は?
夜、銀行に忍び込んで金庫狙うかな
ダイ・ハード見すぎだってw たしかにそれもいい手
でしょ? なんだったらデパートに忍び込む、なんだって持ってこれんじゃん
でも服盗んだらバレるからな、ってかさ透明人間って自分は透けるけど物は透けないじゃん! どっちにしろお金もアウツじゃん
・・・たしかに、やっぱり好きな人のところにいくしかないか
まァーそんな腹黒いひとは透けることできないけどね
いや、いや、矢沢だって人のこと言えないじゃん
お金のよっぽど汚いわ!
じゃ、お互い様ってことにしよっ
ヤダっ!
学校生活のLR
いつもの日常が始まった
先生達は「学校生活を充実させるも腐らせるも過ごし方次第」なんていうけれど、問題はもっと根底にあって、教室での座席位置が充実度を左右する
クラスでいじめはなかったし、みんなと大体仲良くしていたけれど、最上級に仲いい人と授業中、後ろの席で話していたいじゃん、あそんでいたいじゃん
それこそが学校生活の充実
人生の1/3は睡眠だけど、学生にとっては1/3が学校生活なわけで
あァー後ろの席の人が本当にうらやましい
すごい気楽そうで・・・
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見えない未来
給食時間が終わりみんなで体操着に着替えた
あたしの学校は午後になると体操着に着替えなければならない
理由は6時間目が終わった後、掃除をするためと聞かされているがいまいちよく分からないでいた
宿題や教科書は忘れてくるのにジャージを忘れてきてる人なんてほとんど見た時がない
なんでなんだろうね
あたしはこの日の昼休みは外に出ることにしていた
しかし、昼休みになったというのに先生はずっと教卓のイスに座りこみ、みんなを見渡している
はやく職員室行けよ! いったい何してるんだよ!
トイレにいったり廊下に出てブラブラしているとようやく昼休み10分すぎたところでいなくなった
昼休みは30分しかないっていうのになにしてんだよ!
あたしは急いでバックから大人に近づける小さい紙の箱を取り出し腹にしまった
多分ほかの連中はもういっているだろうと少しあせり小走りでいつもの場所に向かった
階段を勢いよく下っていると先生がうつむきながら階段を上ってくる姿が見えた
あまり焦っていると怪しまれると思ったし、ズボンのゴムから間違って落ちてしまえばモノが姿を現すわけで・・・歩きに切り替えたがどうやら効果はなかったらしい
すれ違うまでは良かったが突然後ろから声をかけられた
思わずドキっとしてしまった
そして同時に絶望すら感じた
もしばれれば親に連絡がいくだろうし、学校にも呼ばれ、家でも怒られで大変なことになってしまう
あたしの親は厳しいほうだから「もう一切外出禁止」なんて言いかねない
矢沢さんそんなに急いでどこいくの?
全然いそいでないですよ
そ~お? なんか急いでいる風に見えたから
・・・完璧に怪しまれている
先生達は持ち検が大好きでバックのみならず身体検査までところ構わず勝手にし始める
どうしよ、どうしよ、と焦って解決策を必死にさがしたが何も思いつかず気づけばうつむき加減になっていた
・・・まァーいいわ、悪い事しないんだよ
落ちた気分を元通りに取り戻すことはできなかったけど、少しの解放にほっとした
しかし、こんなことを繰り返していたらいつかバレるだろうなと少し慎重にもなっていた
あたしが再び階段をくだろうとすると思い出したかように、国語教師、空野が口を開いた
あっ! そういえば読書感想文のことなんだけど・・・
この言葉を言われるまであたしはすっかり忘れてしまっていた
それもそのはず、読書感想文というのは今まで提出して終わりだった
クラスでの発表もしなかったし、授業中もその話題に一切触れることがなかったから先生は本当にみてるのだろうか? と疑問をもった時があるくらいだ
あたしの中で嫌な予感は増幅していた、そしてその感は結構当たる
モノが見つかるより刑は軽いだろうけど、今まで誰もやってこなかったことだし、どんな終焉を迎えるのか見当もつかなかった
ここで怒られる分にはまだまだ可愛くて、そこからこの話題がクラスにいき「読書感想文を写してきた来たバカ者がいます」とみんなの前であたしのしたことをばらされるかもしれない
先生は名前まではださないと思うけど、こんな時はみんなの感覚がいつも以上に研ぎ澄まされ、犯人は不思議と洗いだされてしまうものだ
実はこれもまだ可愛い方
学年集会という場合もある
約200人の生徒を前に先生がこんな事実をばらしたらみんなびっくりするだろう
犯人だれだよ、最低、そんなクズもいるもんだなと四方八方から分からない人物に向けてのバッシングが始まり、あたし自身はそのすべての言葉を全身でうけとめなければならないし、その重圧に耐えれず耳まで真っ赤になってしまうだろう
スペシャル版である全校集会もまた然り
先生達は「こんなことはしてはいけない」と注意するわけだが、先生の訴えもむなしく生徒達は「誰がやったんだ」とそっちの方が気になってしまう生き物
これは罪と罰
あたしは考えれば考えるほど、どんどん闇へのイメージが膨らみ、いっそのこと階段から落ちて保健室行きになりこの話を中断させようかと思っていた時。
空野は明るく話を続けた
良くかけてたよ。先生、感動しちゃった!
えっ・・・